First Kiss

幸坂かゆり Weblog

カテゴリ: Nouvelle&書き物関連


少々、時間が過ぎましたが、
幸坂かゆり、小説ブログ「L'oiseau Blue」にて続行中の、
「微エロ?で32のお題」(リンク切れ)の22作目を更新しました。

「香水。或いは幸福な恋。」
今回の小説は、壊れないものを書きたかった。
多少、荒い設定であるのは承知の上で、
純粋な熱い恋の時期で、まだ互いにときめきを内包していて、
問題も起きず、起こさず、めでたしめでたし。
わたし、とても幸せ。僕も幸せ。そんなお話。お伽噺です、少しだけおとなの。

◆ ◇ ◆

で、追記なのですが、
この物語の最後、しっかりあとがきが残っていました。
それを書いておしまいにします。以下、手に残っていたあとがきより。 

【あとがき】 2014.3.09 

年の差のある恋愛も友人関係も仕事も健康も人生も、
特別に波乱がある訳でもなく。
ただ恋うる相手を持ったときもその後も大丈夫だと思える物語。

よって、何の変哲もない物語なのですが、
たまにはこういう起承転結に拘らず書くのもいいなと思い、書かせてもらいました。
人物がローマ字であるのも「誰」という括りをつけたくなく、
しかし個性を入れなければ伝わらないために、そう表記しました。
Fはフリー。Bは美しさ=Beautifulの頭文字です。
彼女は主人公の立場で「私」「彼女」で通じると考え、省きました。


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いつもお世話になっている、
物書きさん応援サイト「Mistery Circle」さん、
52回目になる今回も小説を掲載していただきました。
よろしかったらご一読ください。

「Mistery Circle Vol. 52」(参加された皆さまの小説)
http://misterycirclenovels.blog.fc2.com/blog-entry-272.html

今日載せる画像はすべて、この小説の資料になったものです。
この画像たちを観てこの物語を進めていきました。
ただ消してしまうのはしのびないので、
ブログ内に残しておこうと思います。 
そして、私の小説内から文章を少しだけ。


◆ ◇ ◆


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目を閉じて祈りを十分に捧げた。
ふたりで土を被せた瞬間、可愛らしかったブルーの姿が蘇り、
ふたりは抱擁し、ライもやっと現実なのだ、と受け止め、嗚咽した。


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エリの声はライの足元からすぐに聞こえた。
彼女は草の中に横たわっていた。
ゆっくりしましょう。ブルーがくれた時間よ。その言葉にライは微笑んだ。
 

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「君の言葉は詩的だな。」
「してき?」
「ポエムのように美しいってことさ。」
「ああ、そういうこと。でも、何の意味もないわ。わたしはただ感情を表しているだけ。」
「だからすごいんじゃないか。そんな言葉、
 言おうとしたって言えない人間はたくさんいるんだよ。」
 
 
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何が起こったのか、わからない。
ライは瞬時にエリを探す。すぐに肌に触れた。
安心して体を引き寄せた。触れたのは、彼女の脚だった。


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ライはただ、たった今、エリが欲しかった。今だからこそ欲しかった。
ライにとってエリは人生のすべてだった。
物を書く、とエリに言った言葉だって、エリがいなければ。


◆ ◇ ◆

冒頭の画像は私が一番インスパイアされた「エリ」のイメージ。
・・・しかし何と言うか、写真の力って偉大だな、と(笑) 


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本当はお題が出るごとに書きたいのは山々なのですが、
如何せん、そううまく思考回路がうまくできてないもので。

そんな私が参加させていただいてるのが、
物書きさん応援サイト「Mistery Circle」。
今回も定例になりつつある、
第5回目のオススメMCが発表されました。
(※MCはMistery Circleの略です)

僭越ながら、
わたくしもオススメに投票をいただいております。
どうもありがとうございます。
本当に思うだけなら一日で5本くらい仕上げたいです。
いや、できないけどね。
今回私が票をいただいたのは「内面のノンフィクション」という一遍です。

本題です。

《《 オススメMC 司会進行表 》》

(1) メンバーさん達の一言
(2) 新管理人紹介
(3) ナイスタイトル賞発表
(4) ナイス名台詞賞発表
(5) ナイスキャラクター賞発表
(6) 管理人特別賞発表
(7) 総合オススメ賞発表

こういうふうな順番で、
管理人さんは4人いらっしゃいます。
皆さん、イラスト付きでとても個性的な面々です。
評価は☆の数で投票で決まります。
投票するのは読者さんなら誰でも良い、という、
とても自由な方式です。
私も無記名でしたが他の方の作品に投票しました。
私自身、いくつか☆をいただいたので 自慢 報告します。

まずそのページはコチラです↓
第五回 オススメMC & MerryChristmas

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http://misterycirclenovels.blog.fc2.com/blog-entry-258.html

そちらでも本題に辿り着くまでがかなり長いです(笑)
ま、クリスマスだし、ある意味無礼講ってことで。はい。

《《 ナイス名台詞賞 》》(☆一つ)

 『来生』※主人公の名前
 「照れるね、でも、ありがとう」
 
 【 読者コメント 】
 ●これが言えたら、人生上等だ。

《《 ナイスキャラクター賞 》》(☆一つ)

 『来生くん』

《《 総合オススメ賞 》》

 2013年度掲載作品の中で「これはオススメ! 
 読んで欲しい!」と思える、超ステッキーな素晴らしい作品に贈られる賞。

《《 ☆☆☆☆☆☆☆ 星七つ作品 》》 該当二作品

Mistery Circle Vol. 49 《 空白のノンフィクション 》 幸坂かゆりさん
【 読者コメント 】
 
●ホッとする切なさと感動が味わえました。素敵です。
●もうこれ 大好きです。うさぎ耳の運転手と夜行バスに乗りたい。いやいや、主人公が色々思い出すシーンが鮮やかに迫ってきます。 
●エロさが足りないのですが、何かあったんですか?
●かゆりさんの書かれる文章が好きなのですが、この作品は特に胸にきました。一生チャレンジし続けられるということは尊いことだと思います。小説から、あとがきまでも含めて。読むことができて良かったです。


☆七ついただきました!
どうもありがとうございます!

スクロールしていくのが怖くて怖くて。
選考と言うのはどきどきもはらはらも、色んな気持ちが含まれますね。

一年に一作書けるかどうか、毎回、自分の中で闘いでした。
諦めて罰で名前の最後に「みそ」ついてもいいや、という気持ちと、
(※締め切りを守れなかった作者には○○みそ、と付けられる)
最後まで自分の書いたものの最後は自分で読みたい、という気持ち。
なぜなら「書きたい」と思ったその想いこそ、自分を生かしている中心だと思っているので。
相変わらず大げさですが(笑)
大げさついでに言えば、もしも死ぬなら書き終えてから死にたいと思った。
書いていた時期が介護真っ最中だっただけに。

心も少しずつ落ち着いて来て、
新たにこうして自分の書いたものを意識させられる、
こういう場は実にありがたいことです。
MCさんという場所があって本当に良かった、と思うのです。
実際読んでいただきたいリンク先も激長いのに、私自身も長文で、
読む方は疲労困憊になってしまうと思うので、
とにかく感謝の気持ちを伝えて、筆を置きたいと思います。

これからも、
できればペースを上げて書いていけたら。
書いていく、という気持ちがなくならないように、
と、切に願いながら。
もっとうまくなりたい。
もっと色んな人に読んで欲しい。
そんな前向きな自己顕示欲を行動に移していきたい。

今年もお世話になりました。
実は☆七つに私の作品の名前を見つけた瞬間、涙が出ました。
そして、読者さんの感想もありがたいです。
よく言われているけれど、書き手は書いてる間、
とても孤独なんですよね(アマチュアが偉そうですが)
自分の血肉を書き出しているのだから当然かもしれません。
そんな作業の果て。最果て。
そこに「読みましたよ」と言ってもらえることに、
やはり一言です。感謝しています。
それ以外に見つからない。ありがとうございます。心から。

幸坂かゆり


あ。最後にひとつだけ。
若干一名の読者さんにはエロ不足のようでした(笑)
それも含めて嬉しいです! 


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唸っていたお題小説、無事掲載させていただきました。
ぜひ、こちらを。↓



今回の私のお題

起「一生チャレンジし続けられることがあるなんて、うらやましいです」
結「社会、マジ、ウザい……」

でした。


今回のお題は、いつにも増して難しかったです。
普段使わない言葉遣い。
あまり考えた事のない感情。
どうやって描き出そう、導き出そう、
と、自分の体験を色々駆け巡らせてみました。
もちろん、すべては体験ではないけれど、感情の記憶を。
途中、バタバタとエピソードを詰め込んだ場面が出てきます。 
普段なら詰め込みすぎると、ひとつのエピソードを生かせないので、
分けて、と考える所ですが、今回は内容が内容なだけに、
思い切り詰め込ませていただきました。

お題が決定し、そこから毎日、
浮かぶキーワードはすべてメモにしたためました。
そして直前まで、まったく違うお話で書き進めておりました。
異世界というか、もうひとつの地球というか、
そういう場所を舞台にした若いカップルのお話で。
その話も嫌いではなかったのですが、全然まとまらなくて、 
現実には、最後の文が決まっているだけに、
そこに行き着くまでの展開がまとまらず、
締め切り間近にがらりと方向転換してみました。
今の私が書けたんだから悔いはない。

Mistery Circle(トップページ)


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小説ブログ「L'oiseau Blue」にて、
お題小説(全部で32個)の21作目を更新しました。
リンク元も既に切れている状態なのですが、最後まで続けたいと思っています。
時間がかかりすぎておりますが長い目で見てやってください。
リンクを貼っておりますのでぜひご一読くださいませ。

◆L'oiseau Blue

◆お題21「妄想癖の恋」
http://blog.livedoor.jp/y_yukisaka/archives/52045075.html


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小川洋子さんの「余白の愛」を読み終えた。

何日か前に読了していたのですが、なんというか動けなかった。
頭の中を言葉に変換できずにいた。最後のページを読み終え、
ぱたん、と静かに本を閉じ、表紙を見つめたまま。
言い表せない感情が、ふつふつと湧いてくるのがわかった。
もう少しで泣き出しそうな一歩手前。いや、こころでは泣いていたのかもしれない。
小川さんの小説には「心」をふたつ用意しなければいけない。
現実を読む「心」と幻想を読む「心」。
何だかめちゃくちゃな言葉だけれど私にはその必要性があった。

読んだのは「余白の愛」以外に「完璧な病室」と「薬指の標本」の2冊だった。
小川さんの初期の小説たち。読後感が3冊とも同じ表情だった。
代わり映えしない、とかではなくて、そのすべてが静かに細かく進んでいくので、
感情があっちこっちに彷徨ったりしないのです。
けれど、先に書いた「ふたつの心」を用意しなければ、
それはただ単調だったり、意味を考えすぎてしまったりする。
幸運なことに私は小川さんの小説がとてつもなく、
アドベンチャーであり、サスペンスであり、ラブストーリーに思えた。
本当にとても静かなのだけど。それは、深夜に雪がしんしんと降り積もる様に似ている。

実際、読み終え、窓を見ると雪が降っていた。ひらひらと踊るように。
まるで小説の世界をこの世に引っ張り出してしまったかのようだった。
私にとって衝撃であるはずのこの作品たちは、初めて味わうものなのに懐かしくて、
やっと恋しいものに出会えた、と感じた。
そこで目には浮かばない「心」の涙が溢れたのでした。

私は物語の中に恋のように入り込み、
読むページが少なくなっていくことに、悲しさが襲った。
それは「余白の愛」の主人公の女性の感情そのままだった。
ラスト近くに出てくる、

 「戻りたくても、戻れないのよ」

という、主人公の言葉は、まるで私自身に言い聞かせているようで、
きりきりと苦しいほどに私の胸を締めつけた。
悲しいけれど幸せで、すべての感情が混ざり合い、
私の中でくるくると回る。今も回り続けている。
多分、ぼぅっと物語の中にいるのだろう。
だから私は今夢の中でこの言葉を書いているのだと思う。
夢を見ているのに、目は冴え冴えと醒め、
もう一度命を与えられたような感覚に陥っている。

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「32のお題」の今回のテーマは「堕ちる」
一応書き終えたけれど、どうしようもなく救いようのない話になってしまったので、
更新に迷い、とりあえず寝かせてみる。

今の時期、すぐに気持ちが悲観に傾く。
それに負けてどっぷり浸かったら出てこられなくなる。
それだけは避けたい。けれどそんなふうに現実から逃げて書くから、
私の物語は非現実になってリアリティに欠けるのだろうか。
だとすれば致命傷。とても痛い部分だ。
どんなファンタジーだって「リアリティ」があってこそ成り立つのだから。

感情に自信がなくなる。

それは一番、怖い。
自分が今していること、しようとしていること、本当にいいと思ってるの?
もしもそう問いかけられたら、多分私はすぐに首を縦には振れない。
本当は嬉しいことだったとしても。そのくらい感情に自信がない。
もちろん、私みたいなひよっ子は、まだまだ努力が必要だし、
自信なんて後からついてくるもので、
いつもいつも持っている人なんかいないだろう。
けれど、やはり私の心の中では「認めて欲しい」という想いが満ち溢れている。

◆ ◆ ◆

なんて、このようにすぐにどーん、と落ちてしまう中で、
「堕ちる」なんてテーマを書いてしまったのが、まずかった。
もうちょい、練り直そう。
私自身が笑ってしまうくらい悲観主義なので、
それをどうにか心の中でセーブしながら調理して小説にしなければ。

ひりひりと心の痛いまま本音を小説にしてしまったら、
私は私を守れなくなってしまう。・・・なんてことに今気づいた(笑)
楽しいばかりでなく、苦しいばかりでなく、
調和のとれたどちらにも寄りかからない「心」で書かなければ。
私小説、という分野にも興味がある。
瀬戸内寂聴さんのように、ものすごい経験をしてきた訳ではないけれど、
自分の心をまっすぐに書く場合、
変にストーリー仕立てにしないほうがいいのかも知れないと最近思う。
何だか今日は何を書いても迷った文章になる。
けれどこんな日もあっていいのだ、と自分に言い聞かせよう。
鬱々とした中で考えてたって、しょうがない気もするし。
こういうことの答なんてすぐには出ないものだろう。

***

人間は考える葦である。
かの哲学者パスカルだって、そう言っているのだもの。
彼は、人間の思考について考え続けた人。
自分も含めた人間というものを定義しなければ、
彼は自分を認められなかったのかも知れない。
なーんて。浅はかな脳みそで言ってみる(笑)

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小説執筆途中に、ちょいと休憩をば。

執筆と言ったってパソコンのキーを打つのだから、
言葉としては間違っているのだけど。

そう言えば6時からずっと書いてた。
トイレ以外、座りっぱなし。やばい。足腰。
でも、である。昨日投稿した私の小説はほぼシュレッダーにかけたいのだ。
パソコンだから消せるが。私の投稿したものなんて甘すぎて話にならない。
こんな事書いてる自分も洒落にならない。
と、
玉砕寸前になった。あくまでも寸前。玉砕するにはまだ早いとは思う。
うすうすわかっていたからだ。
私はあろうことか二番煎じにした物語を少しだけ変えて投稿する、
という前代未聞の事を、してしまったのだ。反省極まりない。

◆ ◆ ◆

本当は、以前「起」と結」の決まったお題の中身を作る、
というサイトさんに所属していた頃のもので、
もう少し書き足したいことなどがあったので加えたら、2000字になった。
幸い、誘うようなお話であの場でもそこそこ好評だった。
じゃあ、これを投稿してみよう。それが既に間違いだった。

本当に、
本当に私は甘く世の中を見ていたんだ、
と、深く深く地の底までも実感しております。
まず、所属していたあそこは悪い意味でも何でもなく、
レベルが違い過ぎる。ゴザンスとはあまりにも。
ゴザンスには、かの田川ミメイさんや、九鬼ゑ女さんがいたところ。
恐れ多くも登録なんぞして、私の名も連ねてもらった場所だが、
私など、お門違いの場所だったかも知れないのだ。あまりにもレベルが・・・。

もうこんな失敗するものか。
きちんと批評してくださる、というのは本当にありがたい事なのだ。
そこらへんの「ここおかしいよー」やら「面白くない」やらの、
くだらない批評なんかより、数倍きつい事が書いてあるが、
それが的を得ていれば傷つくなんてない。(心臓発作起こして薬は飲んだが)
その想いに応えてあげられない自分が歯痒いのだ。
今、ずっと書き直しているものはどこにも出していないものだ。
だからこそ、怖い。

編集さんは色々書いてくれた。
こんな並大抵のものは出せない、私の力はこんな物じゃないでしょう、と。
つまりは紋切り型で平凡なバカ同士のお話だったのだ。
そこがうまいとこ突いてるのだ。私もそう思ってた!(じゃ、出すな)
やっぱり甘かったんだ。私のせいだったんだ。
もう、口惜しくて口惜しくてすぐにパソコンに向かったけれど、
すぐにできるか、と言うと、そんなおいしい事、あるはずもなく、
ただ今も、執筆中です。ああ、もう夜が明けてしまう。

***

こないだ、コメントをくれた小萩さんが、
私のインタビューを読んでくださって「強い」と仰ってくれた。
男に「強い」と言われるのは、なぜか心に引っかかるが、
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女性に言われると、嬉しい。
私は、強いだろうか。ほんの少しでも。
けれど、小説に関して泣き言なんて書きたくない。
書くなら、済んだあとだ。
もう少しで夜明け。もうひとがんばり。
そんな、がつがつとした私をまるで執筆お化けでも見るように、
電線から、カラスが見下ろしている。友達になれるかもね。私たち。


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このブログに短篇とは言え小説をまるごと載せてしまったのは、
あまり良いことではないと思えた。
字も小さいし、目を悪くしそうで。でも、ごめんなさい。
どうしても載せたかったんです。
(※後日談 これをきっかけに小説ブログを開設しました)

あの小説は、既に「Mystery Circle」さんで発表になっているにも関わらず、
どうしても主人公から離れられなくてもう一度書いてしまった。
偉そうなのを承知で書くと、書かないでいると心がやせ細っていく気がする。
書く事によって、私の心は、まるまると栄養に満たされる。
そんな事を最近思う。

  


けれど、その主人公から離れなくては次に進めない。
だから飽きるまで読んで読んで、同じ字を書いて書いて、
もういい。そう思えた頃、きっと主人公たちは私から浮遊する。
私は自分の手で彼らを弔わなければいけない。
じゃないと、私が逆の側になるかも知れない。
…なんて書くと、めちゃくちゃ怖いですね。

でも、書けなくても書きたくて書きたくて、壊れそうになる。
壊せたらいい。もう戻れない場所まで行けたらいい。
バカみたいだけど、作家、という肩書きが私は欲しい。
そうすれば、誰にも何も言わせずに、小説が書けるから。
ただそれだけの甘い理由だ。だからと言ってそうそううまく事が運ぶ訳ではなく、
私はやはりまだ同じ場所から動けない。

「書ける」人が心底、羨ましい。なぜ私は書けないのだろう。
魅力的で、みんなを惹きつける作品が。それが口惜しい。
24時間考え尽くしたとしても、書き続けたとしても、
努力が実らない世界というものがある。
才能だけの世界。それが、作家だと思う。
こうして書き連ねる言葉はただの私の感想であり希望でしかない。
喉から手が出るほど、なんて、ありふれた言い方であったとしてもそう思う。

上の画像はフランス女優、エマニュエル・ベアール
ほんの少し年齢を感じさせる目の下の仄かなクマが、
とても魅力的。ああ。こんなふうに年取りたいなあ。←(図々しい

「嘆きの唇」


地下鉄の中が暑くて、気持ちが悪い。

風を浴びたくて、知らない駅で降りた日曜の夜。
飲み過ぎて、千鳥足になっていた。
誰もそばに来ない。
小気味がいい。
みんなよけて行っちまえ。
あいつのせいだ。何もかも。


オレは路地裏に入ってどこか休めそうな場所を探した。
立ち塞がる物を蹴飛ばし、非常階段を見つけた。
何段か這いつくばるように上り、座った。
煙草を口にくわえて火をつけた。
空に目をやると、満天の星空。
天まであいつを祝っているのか。


今日は、あいつの結婚式。


少し背中に痛い階段に凭れながら、あいつと初めて会った日を思い浮かべた。
いつも行く本屋の片隅、あいつはひとり、涙を流していた。
長い髪で隠されて、他の奴は気づいていなかったけれど、
その細い指が震えていて、オレは放っておけなくて話しかけたんだ。
驚いたその目は、丸くて美しい宝石のように映った。
あいつは、あの時から婚約していたんだ。
ぽろりと灰が落ちる。
あの涙は婚約者との諍いが原因だった。
なのにオレはお節介にも相談に乗っちまったんだ。
あいつも、こんな見ず知らずにくっついていく世間知らずのお嬢様だと思った。


けど違った。


あいつは気持ちがいいくらい婚約者を罵倒して、
こんな結婚やめる、と唇をとがらせて言った。
オレはしおらしい涙とやんちゃな素顔に呆れて笑い、
あいつもオレのそんな態度に照れて笑った。
それからオレ達は始まったんだ。
毎日毎日愛し合った。婚約も解消したと思っていた。


なのに。


「結婚するわ。さよなら」


煙草が階段に落ちて、オレは足で踏みつけた。
こんなに憎い、なのに、愛しい。
もう一本煙草を出そうとして、箱を落とした。
舌打ちしながら拾おうと屈むと、ジャケットの胸ポケットから小さな手帳が滑り落ちた。
あいつが入れたのか。
真ん中のページには一行の走り書き。


「あたしを愛してるなら奪いに来て。愛してるって言って」


オレはその文章を凝視する。あいつの口癖。オレは一度も言ったことがない。
そう言えば、と必死に思考する。あいつは、別れを告げる日も訊いてこなかっただろうか。
オレはバカにするな、とあいつを見なかった。時計を見ると、式の最中。
酔いはとっくに醒めていた。オレは手帳をポケットにしまうと、立ち上がった。

あいつの手を掴んで、逃げてやる。どこにでも。オレは階段を駆け降りた。
視線の先のドアには「非常口」と書かれてあった。


<Fin>

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「嘆きの唇」/幸坂かゆり


*800字小説 お題 「初めて会った日/非常階段で/手帳が」
 お題元「いっぺん

◇◆◇

ゴザンスライターの小日向とわさんのブログで募集していた、
800字お題小説を書きました。
今回で7回目の募集なのですが、私が参加したのは3回目なので、
「Vo.3」と表記させていただきました。
これからも、できるかぎり参加したいと思います。

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