随分と間を置いてしまいましたが、
先日「Mistery Circle」様に寄稿した小説2作の批評が発表されました。今回は私にとっては異例の2作品同時投稿だったのですが、とても温かい評価をいただきました。

評価をしてくださる管理人さんが、あとがきに触れ「今、どうしても書きたかった」という私の心境を心遣ってくださいました。このふたつの作品のひとつめ「砂時計の住人」は最後まで書ききったと思えるのですが、もうひとつ締め切りぎりぎりまで推敲していた「軌跡」は、これで終わりではない、と自分で思っています。始まり方も終わり方もどこか中途半端なこの物語に登場する女性、友子は2006年に書いた「センチメンタル・ジャーニー」(小説ブログ「L'oiseau Blue」にリンク)という私の小説の準ヒロインとして登場しています。この物語はどこか自分の分身のようで、フィクションだけれどノンフィクションも交えた特別な作品です。ただあまりにも私的感情を押し出しているため、作品としての完成度は高くないと思います。

2006年という過ぎた日の小説の人物を登場させてまで「軌跡」で書きたかったのは「寂しさを避けるために」ということでした。ちょうどお題をいただいたときに観た映画で、自分がどこかに置きっぱなしにしていた感情が蘇り、そこから動けなくなってしまい、その感情に向き合わざるを得なくなってしまいました。寂しさは幼少時代からずっと私の心の奥底でうずくまっていたものでした。それゆえに大きな痛みになっていました。その痛みに触れ、何とかこの感情に名前を付けて優しく休ませてあげたいと思いながら書いていたのが「軌跡」です。「センチメンタル・ジャーニー」が1作目であり「軌跡」は登場人物のひとりである友子が、成長した姿を持ち、偶然出会った女性と向き合う、という物語です。「センチメンタル~」で主人公だった「さとみ」ではなく、友子が出てきたのも自分には手に負えない直感でした。

忘却の彼方に押し遣っていた感情を間欠泉の如く噴出させた映画は西原理恵子さん原作の「パーマネント野ばら」(2010年、吉田大八監督)です。原作ではほんの少しの登場だったヒロインの娘が映画では全体を通して大きな存在感を見せています。娘だったヒロインがやがて母になり、葛藤していた惚れっぽい母親への思いを娘には味あわせてしまいたくないと思いながらも自分もまた誰かに恋をして母親という立場を時折忘れる。彼女は恋に囚われないよう必死に足を踏ん張っている。答えは出ない。あのままあの物語に続きがあったならどちらに行ってしまうのかも読めない。それは感情というものが誰しも100パーセントはコントロールできるものではないから。もしも私がヒロインの立場なら恋に走ってしまった方が楽になれるかも知れない、と思いました…。西原さんの漫画はコミカルには描いてあるものの唐突な暴力描写があったり、シビアな場面にも冗談を挟んだりするのですがそれは漫画だから成り立つことで、映画ではそんな場面を下手に入れるとふざけているように見えてしまうと思うので彼女の原作を映画化するのは大変難しいと思います。けれど映画版「パーマネント野ばら」はとても上手にコミカルさと悲哀をミックスし、「親子の関係」と「恋」とを切り離して描きながら最後はその相反するふたつのテーマが溶け込んでいきます。余分なものを省いた名作です。

名作であるがゆえに影響を受けてしまい、日常生活に支障をきたすほど大変なことになったのですが(笑)
けれど、今あの頃の感情が表面に出て来てくれて良かった。忘れたままでこの先小説を書いていくことは不可能に思えるのです。「軌跡」という物語は後先を含め、きちんとこれから本来のヒロインであった「さとみ」もそして「友子」も今回登場した「愛子」も交え、ひとつの作品にしたいと思います。ちなみに「愛子」も私の過去の小説の準ヒロインでした。ああもう、今回は本当に登場人物たちに助けてもらいながら書いたな、と思います。


パーマネント野ばら [DVD]
菅野美穂
デイライト
2011-01-07


パーマネント野ばら
西原 理恵子
新潮社
2006-09-28



 



※「カンノが出会ったオンナたち」はヒロインの菅野美穂さんが撮影中のエピソードなどを綴ったエッセイです。西原理恵子さんとの対談もあり、読み応えがあります。彼女の感性はとても輝いていて素敵です。

「三つの癒し 2」に続く! いつになる!でも!書けて良かった!