さっそく本題、映画「Livid」の感想です。
結末に触れますので知りたくない方はご用心。
映像が、とても美しかった。
薄暗い墓地、古い洋館、バレエを習う細い少女たち、
暗がりにぽつりと輝く漁火、
個人的な好みを描いてもらったような映像でした。
が、これはホラー映画。しかもスプラッター。
母親を自殺で亡くし、訪問介護の仕事を始めるリュシーが主人公。
彼女の瞳はオッドアイです。
介護職のケアマネさん、ミセス・ウィルソンと共に訪問先を回り、
最後に大きな古い洋館に行きます。
その屋敷の主は100歳を越える老女、ジェセル婦人。
娘に先立たれ、輸血しながらの昏睡状態。
その胸には鍵のついたネックレスがかかっており、
ウィルソンによるとジェセル婦人が貯めた財宝を開ける鍵らしい。
仕事を終え、リュシーは漁業をする恋人、ウィリアムと落ち合います。
彼の友人、ベンが働くバーでその屋敷の宝の話をするリュシー。
ふたりの男は屋敷に潜り込もうぜ!と、やる気に。
ウィリアムは漁業などやりたくなくてこの町を出たいという。
リュシーに一緒に宝を持ち出して町を出よう、と提案するがそこで一端は断る。
家に戻ると母を亡くしたばかりだと言うのに別の女性と旅行に行くという父親が。
自暴自棄になったリュシーはウィリアムの提案を受け入れます。
真夜中、リュシー、ウィリアム、ベンの3人で屋敷に乗り込み、
眠るジェセル婦人の胸元から静かに鍵を外し、鍵の元を探します。
不気味で素晴らしい部屋たち。
ついに見つけた部屋には白いレースのかかった大きな物体が。
レースを取り除くとそこには古びたバレリーナの姿をした人形がありました。
けれど顔はひび割れ、瞼も縫われ、閉じられています。
人形の足元にある台座に鍵を差し込むと、音楽が鳴り、人形が回ります。
その恐ろしさに、ウィリアムは蹴りを入れてしまいます(何てことを
がくん、と首をうなだれる人形。音楽も止む。
しかし、屋敷中が呼吸し始めたかのように不気味な音が響く。
ジェセル婦人の元に行くと、ベッドはもぬけの殻。
寝ていた後には、真っ黒な血だけが残されていました。
最初の犠牲者はベン。ふらふらと手術室のような場所に瞬間移動させられたよう。
剥製や胎児の標本などを見つけ、怯えていると突如足を刺されます。
ここで頭に白いレースのヴェールを被ったバレリーナ姿の少女3人が登場。
くるくると回りながら楽しそうにベンを切り裂き、殴る蹴る。
ベンを探しながらリュシーとウィリアムも屋敷内で互いを見失い、
リュシーは動物が剥製になったお茶会テーブルがある部屋に閉じ込められる。
次の犠牲者はウィリアム。
ゾンビのようになったベンを見つけ、取っ組み合い、何とか仕留めたけれど、
いつの間にか背後(上から降ってきた)にいたジェセル婦人に頭から噛みつかれる。
残るはリュシーただひとり。けれど、彼女が色々嗅ぎまわっている最中、
突然、剥製の首が動き、ひとつ空いた席にはいつの間にかジェセル婦人が座っており、
リュシーに両手を伸ばす。手を取るとジェセル婦人の若い頃の光景が呼び覚まされる。
それは、バレエの教師をするジェセル婦人の姿。
とても厳しく踊れない子に帰りなさい、と叱責する。
しばらくレッスンを続けているとどこからか悲鳴が。
急いで生徒たちを帰らせるジェセル婦人。
見つけたのはジェセル婦人の娘、アンナ。彼女は吸血鬼でした。
先ほど帰らされた少女がアンナの犠牲になっていました。
婦人に反抗し、その場を飛び出し、注意されるのも聞かず外へ。
生まれた時から外に出たことがないアンナは、
曇り空の中、不思議そうに草の上を歩きます。
しかし、陽が差した瞬間、血を吐き、その場に倒れてしまいます。
異形の者ゆえ、死ぬこともできず、陽に灼かれ、
顔や体がひび割れて行く中を婦人に抱えられ連れ戻されます。
その血だらけの顔や服のままでバレエのレッスンをさせられます。
「あなたはここで生きていくしかない」と婦人に吹き込まれ、ぼんやりと踊るアンナ。
その姿に怒り、背中に足をかけて両手を引っ張って矯正しますが、
力を込めすぎた婦人はアンナの腰の骨を折ってしまう。
ぱたりと力なく崩れ落ちるアンナ…。
気づくとリュシーは元の剥製の部屋にひとりでした。
ベンもウィリアムも死んだことを知らず、探し回るリュシー。
偶然アンナのいる部屋に入り込み、そこでアンナの過去も見てしまう。
が、突然入ってきた女に腹を殴られ、気絶。それはミセス・ウィルソン。
あの日、動かなくなったアンナと婦人を見つめ、それからずっと、
婦人の右腕として生きてきたのがウィルソンだったのです。
町で殺人を犯しては血を手に入れ、婦人に輸血していたウィルソン。
リュシーのオッドアイはこの世とあの世を繋ぐ力があるようです。
リュシーは無残には殺されません。なぜならその力を持つリュシーは、
アンナの魂を入れ替えることを選ばれた人間だから。
手術台の上で、お腹を一筋切られ、蚕を埋め込まれるリュシー。
同じようにアンナの首にも埋め込まれます。
その後、リュシーの目はホチキスのような機械でふさがれます。
これで霊界との道が閉ざされ、母親は見えなくなります。
蚕は成虫になり、リュシーとアンナの口からそれぞれ羽ばたき、
入れ替わってまた口の中に入り込みます。
リュシーの体になって目を開けるアンナ。
不思議そうに鏡に映る姿を見て「人間の」頬に触れます。
しかし、ジェセル婦人はすぐに「踊れ!」と命令をする。
アンナはもう、なすがままの人形ではありませんでした。
ほとんど手下と化したウィルソンが踊るよう促そうとしますが、
アンナは彼女の懐に入っていた鋏を抜くと、ためらいもなく彼女に突き刺します。
ジェセル婦人は怒りますがアンナは婦人をも刺します。
アンナはリュシーのいる場所に戻り、長い間縫われていた瞼を外します。
そしてリュシーの体である自分の手を切って血を滴らせ、アンナの唇に含ませます。
ゆっくり目を開くアンナの目はオッドアイのリュシーのものでした。
ふたりは倒れる婦人とウィルソンの場所に行きますが、
ここで再び、婦人は息を吹き返し、ふたりを襲います。
一致団結したふたりは婦人の息の根を止めます。
ふたりは静寂の中で一緒に眠りにつきます。
リュシーは今では人間ではないのでつらそうです。
崖の上に立つふたり。力を失くし、繋いでいた手が離れ、
リュシーは崖から落ちていきました。
しかし次の瞬間、空に浮き、笑顔を浮かべるリュシーの姿が。
その姿を見て、同じくリュシーの顔で笑顔を浮かべるアンナ。
物語はここで終ります。
グロテスクなシーンもありますが童話のような、
ふたりの少女の友情のようなお話でした。
ここからは私の勝手な憶測ですが、
ラスト、海に落ちず浮いていたリュシーは本当は落ちたのだと思います。
浮いていたのはアンナの目にしか見えない魂なのではないかな。
その証にひび割れた顔がぱらぱらとめくれ、きれいな皮膚が覗きます。
そして最初のクレジットのシーンがラストを明かしているように思えます。
この町は廃れてしまった町なのでしょう。
リュシーの恋人が働いていた船も海の中に傾き、機能していません。
町は墓場だらけで、海辺にはひとつの遺体があります。
その目は片目だけ見えていて青い色でした。
これは間違いなく崖から落ちた後のリュシーの姿でしょう。
異形の生き物だったため、多分骨にはならないまま、朽ちていったのでは、と思います。
◆ ◇ ◆
それにしてもこの監督は男性に何か怨みでもあるのでしょうか。
「屋敷女」でもそうでしたが、出てくる男全員どうしようもないです(笑)
何より男の存在がほとんどないのです。
ジェセル婦人の夫であり、アンナの父親は誰かなんてまったく出てこないし、
リュシーの父親も一瞬だけだし、彼氏たちは惨殺。
しかし、この作品は物語云々と言うより、描かれる画がとても美しい。
リュシー役のクロエ・クールーちゃんも、
アンナ役のクロエ・マルクちゃんもとても可愛いです。
何より、元プリマであるマリ=クロード・ピエトラガラがジェセル婦人役。
よくこの役を引き受けたな、と彼女の懐の深さに感心。
しかし彼女にとって映画出演は2作目で、
以前余命いくばくも無いバレリーナの役で主役を演じていました。
大柄で華やかな素晴らしいプリマです。
で、昨日書いたベアトリス・ダルたんは…初回登場は霊で出てくる上に遺体です。
襲ってくる訳でもないのですが、ここがなかなかショッキングでした。
ある意味、一番心臓に悪いシーンかも(笑)
いやはや、あらすじを書くのが苦手なので長文となりました。
最後に、仄暗くない現実の役者さんのお写真と、
ピエトラガラさまの名誉復活の動画でお別れしましょう。
@carlottaforsberg
アンナ役のクロエ・マルクちゃん。素顔はこんなに可愛い。
でもどこかお人形ぽいかな。
そして、マリ=クロード・ピエトラガラさま、
現役時代の素晴らしき華やかな黒鳥のパ・ド・ドゥを。
(動画お借りします)
でもどこかお人形ぽいかな。
そして、マリ=クロード・ピエトラガラさま、
現役時代の素晴らしき華やかな黒鳥のパ・ド・ドゥを。
(動画お借りします)