duras_agatha


以前、スタインベックの「エデンの東」を3月20日から読み始め、
フィギュアスケート世界選手権が始まる26日までに読了する、
と、ここに決意として書いたのに読了したのかどうか、
まったく触れていませんでした。

読みました!
実際は「エデンの東」全4巻と別の2冊を読む予定でしたが、
全4巻読了後、力が尽きました。

名作と呼ばれる作品。今までは、あまりにも有名すぎて食指が動かなかった。
ひねくれ者なので…。町田樹選手のプログラムが素晴らしくて、
彼がよく口にしていたこの本の「Timshel」という言葉がきっかけです。
彼の言葉ががなかったらずっと読まずに知らないままだったのだろう。
それを思うと本当に出会えて良かったと思う。

登場人物はふたつの家族に分かれていて、
しかも幼少期、青年期、老年期と、
すべて描かれているので名前を憶えるだけで困難になり、
最初に掲載されている家計図を何度も遡った。(あの家計図とても役立った)
最終的に読んでしまったあと、すべての人物は頭に入っていた。スタインベックすごい。
それだけ、印象に残る物語を登場人物ひとりひとりに宿らせていたのだろう。
本当に、今さらなのだけど、そして作家さんに失礼なのだけど感心してしまう。
あれだけの長編なのに、人物設定の矛盾のなさ、構成、
ラストでの余白を交えた臨場感など。

あの4冊を町田選手の如く、まず有限実行、と決めて、
6日間で読了する、と負荷をかけた。
とにかく黙々と読んだ6日間だった。何より物語が私を手放してくれなかった。
とても続きが気になって。読書と言うものをしていて基本である、
「読める幸せ」を実感し、意識したのは今回が初めてだったように思います。

この幸せな読了をきっかけに、どんどん吸収したい欲が高まり、
今は読まず嫌いだった様々なジャンルの本を手にしている。
そして、こうして書くというアウトプットの重要さも読書を詰め込んでみて解った。
読むだけ読んで、興奮したままでいたため、
熱を持った気持ちのまま迷子になってしまった。

そんな訳で、小説だけではなく、
意識的に感情を文章にして表に出すと決めて、
小さな事でも書きとめておくようにしている。

そして、もちろん、もうすぐ締め切り間近であるお題小説にも向かっている。
まだまだ細かい推敲は必要だが、エンドマークがもうすぐそこまで見えている。
この小説を終えたら、実はもうひとつ書きたいものがあるのだけど、
その締め切りは6月30日で、あの、まだ手もつけていない状態で。
しかも200枚以上と言う条件なので。
有限実行はできません…。

できる限り書きます。ダメ元ではなく本気で。
ここで努力したことは必ず無駄にはならない。


◆ ◇ ◆

そして原稿を書き終えた一日には、新たに魅惑の読書タイム。
今はマルグリット・デュラスさまの最後の恋人との手記を、
机の脇に積み、1冊ずつ読んでいる。 

画像はそんなデュラスの映画「アガタ」のワンシーンより。
窓辺に広がる海の暗さが、あまりにも哀しく、あまりにも美しくて。 


エデンの東 新訳版 (1) (ハヤカワepi文庫)
ジョン・スタインベック
早川書房
2008-01-24





アガタ/声 (光文社古典新訳文庫)
マルグリット デュラス
光文社
2010-11-11