柿原朱美さんのアルバム。
イメージでとても甘く優しいサウンドを創る人だと思っていた。
しかし、この「yes」は辛口でした。
彼女の曲はあまり知らなかったけれどインスピレーションで。
そして出会ったアルバムが、この「yes」でした。
クールなピアノが打ち込みの音と重なる。
儚い高音の声が囁くように響く。
歌詞も寂しげなものから、誘惑するようなものまで多彩。
けれど、はっきりと彼女の強さが滲み出ている。
ビジュアルも素敵でジーンズに下着姿のみのカット、
上半身は裸、というもの、その細い体にぴったりと吸い付くようなワンピース姿も。
印象的なのは「Blue Apple」の歌詞の写真でした。
禁断の果実に触れてしまった恋人達の曲ですが、
彼女は文字通り青の中に横たわっている。まるで赤ん坊のように丸くなって、
辛い恋にがんじがらめにされた女性のように。目を見張るような憂いの瞳。
彼女の両手は頑なに自分の世界を守ろうとしているようにも見える。
「私は惑わされない」という意志のように。
インタビューなどで、このアルバム制作のために、
それまでのやり取りをメールで打ち合わせて、
何から何までを決めて、ロンドンに一人で行ったという。
そして今までにない緊張感の中に身を置いたと語る。
そして尊敬するピアニスト、デオダード氏との共演。
その嬉しさと厳しさがこのアルバムにそっと見え隠れする。
全体的にクールだけれど「Girl」という曲は、
学生時代の甘酸っぱい思い出のよう。
振り返りながらも前に進んでいるような微笑ましく、胸がちくりとする名曲です。
きっとこのアルバムを制作して彼女は成長したのだろう。
歌詞カードの最後のページでは、その美しい裸身で顔だけ振り返っている。
そこにはやり遂げた自信が垣間見える。振り返るという事ができるのは、
どんなに嫌な自分も受け容れる事ができる人間だけだから。
その後、彼女は「aK」と呼び名を変えるが「yes」で纏った自信が生んだのだと思う。
彼女の肩や背中、指先の爪のラインに美しい獣のような野心がちらりと見える。
音楽は感じるもの。私は感じるものに対して下手な批評はできない。
けれど気に入った音楽にyesと頷く事はできる。
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