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thomas lavelle photographie
 
血の画像が出てきます。苦手な方はご遠慮ください。
上画像は憂いを帯びたダルの画像。映画とは関連はありません。
素敵な女優さんです。 

2007年の作品で、ポスターやあらすじを読んでいても、
なかなか観る気にならなかった映画なのですが観ました。 
ホラーというより、描写はグロテスク。
体内の液体という液体が存分に出てきます。
しかも、R-18の作品の無修正版を観てしまい、動揺。
その作品とは悪名高いフランス映画「屋敷女」

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あらすじは大まかに説明しますと、
子どもが欲しくてたまらなく、けれど年が増していき、
諦めかけた頃に妊娠を知り、幸せを味わう女と普通に妊娠している女の愛憎劇。
お互い見知らぬ人間であったはずなのに不幸な事故で片や待望の赤ん坊を流産し、
片や自分とお腹の子は無事だったが、夫を亡くした。
ふたりの共通は悲しみ。
出会い方が違ったなら、助け合えたかもしれなかったふたり。
けれど、その事故は一方的に夫を失った方の女が突っ込んで行った事故。
念願の赤ちゃんを失った女はそこからずっと、その女を憎んでいた。
 
夫を失った女は胎児が順調に育っているけれど、
事故のショックからまだ立ち直れていないせいか、無表情で喜びもしない。
明日には生まれると医者から言われているにも関わらず入院もせず、
母親が一緒にいようと言っても「一人にして」と拒否し、
翌朝、上司の男に迎えに来て、とだけ言って合鍵を渡すのみ。
映画の舞台はクリスマス・イブであり、本来なら喜び溢れる日であるはずなのに、
完全に母親になると言う実感が感じられない覇気のない人間になっている女。
自ら好意の交流を断り、たったひとりで過ごす女の前には惨劇が待っている。
 
ネタバレになりますが、結局、
夫を失った女、サラは赤ん坊を亡くした女(名前クレジットなし)役のダルに、
鋏でもって屋敷中追い回され、そこに出てくるサラを何とか守ろうとする人物、
警官や上司、猫(うっ・・・><)など何の迷いもなく、呆気なく殺されていき、
サラとダルのふたりきりになった所で、ダルに事故の真相を聞かされる。
待望の赤ん坊をサラの事故で奪われたダルは、
サラのお腹の中の子どもを自分のものにすることが目的だった。
そのためにはどんな方法も厭わない。それだけだった。
 
ダルの殺し方は、驚くほど鮮やかに犠牲者にヒットする(いいのか、この書き方)
映像的にも思わず手で顔を覆った場面数知れず。
冒頭から不気味な映像で既に血を思わせるクレジットなので、
そこでダメな人は引き返すのが懸命です。今後の人生に関わります。
屋敷に入り込んだダルが一番先にサラと急接近した場面がまた・・・。
ダルは家の中、主にバスルームをかき回し、アルコールの瓶を手にする。
そこにやたらと切れ味の良さそうな鋏を持ってサラの眠る寝室に侵入する。
やおら、サラの横に座り、サラのお腹から寝巻きを捲り上げ、お腹を露出させる。
そこにゆっくり鋏をアルコールの中に入れ、消毒。
鋏の先でサラのお腹を両胸の真ん中からゆっくり腹部を下るようになぞり、
臍にぶつかった瞬間、ぶすり!何の躊躇もない!
 
さすがにサラはそこで目を覚ますが、
覚ましたら覚ましたで、ダルはサラの顔を刺そうとする。
何とか寸前で刃先を止め、バスルームまで逃げ、鍵をかける。
鏡に顔を映すと上唇と下唇をざっくり切られ、血まみれになっていた。
そのバスルームがやたら白が多く明るいため、血の赤が鮮やかに引き立つ。
ダルは追いかけて来てドアを蹴るわ、叫ぶやら、狂気の沙汰。
もう既に人間ではなかったかもしれない。
ただ子どもが欲しい。そのためなら何でもする。
それだけのための生気の塊になっている。
 
ラストシーン。
初産のせいか、なかなか子どもを産めないサラに、
ダルは鋏でお腹を・・・。先は書きません。
サラはそのまま息絶える。
ダルは念願の赤ん坊をその胸に抱き、揺り椅子で幸せそうに揺れる。
そこでおしまい。
 
賛否両論を醸し出したラスト(圧倒的に非難の声多数)ですが、
何と言うか、こんな事絶対あってはいけないけれど、
ダルがすべて悪いという気にはなれない。
なぜなら、サラは子どもが体内にいるというのに、
いつまでも前向きになれず、うじうじと世界一の不幸を気取っていて、
観ていると腹が立ってきたから。
もちろん、最愛の夫を亡くした悲しみは喩えようもないでしょう。
けれど出産を明日に控えているんだぜ!と、何度も画面に言いたくなった。
なので、仮に生まれたところでこの赤ん坊はこの母親の元で愛されたか?
とまで、思えてしまった。
 
ダルのやり方は酷すぎるし、連続殺人だし、
早まってない?後一日待ってせめて病院から赤ん坊をさらうとか考えないの?
(それはもちろん重罪であるが、せめてもの、という喩え)
と、疑問ではあるが、大切そうに赤ん坊を抱くその姿は、
格闘の後で傷だらけになり、原型をとどめない顔になっていながらも、
聖母のように私には映った。赤ちゃんには本当の母親ではなかったけれど、
女の手に抱かれた時、愛情に溢れた感情が充分に伝わったと思う。
血の繋がりがなくても生まれながらに愛を知る事ができた分、
この赤ん坊は幸せだろうと思う。
あくまでもフィクション映画の中の事だから言える話、と断っておきます。
 
しかし、狂気を演じさせたら右に出るものはなく、
その狂気加減が清々しく思えるくらい狂いまくるダル。素晴らしい!
有名なデビュー作品「ベティー・ブルー」から既に狂気というカテゴリにいた。
何せ、死に顔のアップがラストというデビュー作品なのだ。
今後のキャリアがノーマルに進むはずがない(笑)
しかし他の女優さんが絶対引き受けない映画を、脚本も読まず、
監督と気が合う、大丈夫、と思えた時点でどんな役でも引き受ける彼女は稀有な存在。
どんな残虐な映画も監督や作り手に愛を感じたら、
彼女はオッケーするのだろう。これからも。

映画は監督の願望や夢の詰まったものだと思うので、
それが大変不愉快で後味が悪くても、フィクションであるならばある意味安心できる。
特に私個人の意見では現実が大変だったり疲れ気味の方が、
ホラーやグロテスクは観やすいジャンルなのかな、と思えた。
(もっと口に出してはいけない感想もあったが人として疑われそうなので却下・笑)
いやほんと、個人的な感想ですので私の意見を鵜呑みにしないでね!
実際、おすすめしません。残虐過ぎます。
 
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屋敷女、とは邦題であり原題は「Inside」こちらの方が、
より内容を表しているのに何ともったいない邦題。絶対手抜きだ。 
ポスターは、一番上は日本版。下2枚が海外のもの。 
ダルの横顔を反転させてもきれいで変わらないのが個人的にスゴイと思った。

 
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