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父(義父)の通院に付き添っている。
今年の7月、病気を発症して以来一週間のうち一日置き。父は杖を突いて歩く。
7月当初は杖を勧められても「いらん」と撥ねつけていたが、その後、二度にわたる転倒があり、たくさんの人を巻き込んでしまったこと、病院の専門医に怒られたことなど様々な要因を経て、渋々使うようになった。その間に要支援から要介護度2となった。

薬物療法と運動系リハビリサービス、週一回の通所デイサービス、
元々あった持病の物理療法などを交え、少しずつ歩く時の足の上げ下げもうまく行くようになってきた。杖は一時期、4点脚のものを使用していたが外を歩く時は逆に引っかかって危険なため、家の中で使用している。普通の1点脚の杖は外を歩く時用に。
子供の頃していたように傘を地面に突く、という当たり前にできていた行為が病気になってからできなくなってしまい、杖はしばらく引きずっていたが、最近は復活している、と見ていて感じる。

通院の行きと帰りの道のりで少しお喋りもできる余裕が出てきたので、私は普段、家の中から見えていたり、道の途中に植わっている樹木などの名前を教えてもらっている。
いや、質問攻めにしている。白樺や檜葉(ヒバ)、楓など、今までただ眺めて来たものの名前を知ると、突如として身近なものに変化して行くのが私は楽しい。父はどうだかわからないけれど。そして、私がずっと知らなかったそうした木や花の名前を、とっくの昔に父が知っていたことに失礼ながら驚いている。そのくらい今まで話と言う話をしてこなかったのだろう。けれど、そのくらいの距離で十分だ。互いのパーソナルスペースを破らない今の距離を維持したい。父はたまに破るので「ソーシャルディスタンス!」と言ってこちらから離れる。ある意味便利な言葉だ。

病院に行かない日の前日は私の夜更かしタイムとなる。
一時期、慣れない毎日のせいで荒れてビールをだらだら痛飲していたが、さすがに少し体調を崩したためここ最近は量が減った。そして朝餉の支度や父の薬管理などで早起きが必須になってしまったので、量を飲んだら徹夜を覚悟する。
そこまでして飲みたいのか、と思われそうだが、そこまでして飲みたいのだ(笑)飲んでる時間が楽しくて仕方ないのだ。酔いの中で本を開いたり、音楽を聴いたり、小説の続きを書く。そして気怠い朝を迎え、割かし最悪、と毎回思うのだけど、それでもその自由な夜があるから、また早くに起床し、父の朝餉の支度をし、病院に付き添う一日へと移行することができる。

本来、夜型なので夜はいつまででも起きていられる。
しかし意外なことに朝起きて外を歩くのも気持ちいい、と思うようになった。
もちろん自らの意志ではなく、病院の付き添いなので半ば強制的な散歩になっているが、それでも。天気の移り変わり、道行く小学生の自由な歩き方、病院にて下手すると受付の人よりも早く着いてしまうが、すっかり顔見知りとなった看護師さんたちと挨拶を交わし、ちらほらと話をする。そんなちいさなちいさなやり取りが今現在の私にはとてもいとおしい。これほどまでに平和な気持ちが自分の中にあったことに気づけたのも。ぜひとも根付いてくれたらいい、と思いながら今宵はまた自由な夜を過ごす。

  

画像は秋口に咲いていたお花。名前はわからない。